知られざる道東の真実シリーズ18

探検ファイルNO.036


エスカロップの仇を霧多布で討つ


半年以上も探検を続けていると、
一度の探検では、解明できないモノの出会うこともある。

我が道東情報探検隊ではそういう時には、基本的に

「何度もトライして徹底解明する」

というスタンスを採用している。
このスタンスにより、成功した例が

波洗う「春採太郎」に到達!(NO.022)

であろう。
また、「ポンポン山」のように、大失敗した例もある。

我々の間では、一度で納得いかなかった、またはトライできなかったモノを

「宿題」と呼び、再戦を誓っている。

その「宿題」の一つが

「エスカロップ」

なのだ。
これまでの「エスカロップ」の経緯については
探検ファイル NO.030の落石岬に、エスカロップの日は落ちて をお読み下さい。

NO.030ファイルを読んでいただいた方はお解りだと思うが、
「エスカロップ」とは、根室市にしかない「料理」の名称である。
謎の料理であることもさることながら、

音(おん)が気に入ってしまった、

と、いうことも、我々が「エスカロップ」にこだわってきた理由である。
この料理が「かつめし」とか「根室丼」であれば、我々はこんなにこだわってはいなかっただろう。

どこの言葉かも知れない「エスカロップ」という響きが
我々を魅了したのである。

今から思えば、

こんなものに魅了された我々は大馬鹿者であった。

我々は探検隊にとって「食べ物屋は鬼門」であることを

嫌と言うほど思い知らされたのだ。


いつものように地図で説明しよう。

赤部分が霧多布近辺だ。
(根室近辺に関しては、探検ファイルNO.030をご覧下さい)

拡大図



探検決行日9月30日(水曜日)

天気:晴れ
参加隊員:「テル」(隊員NO.004)「まえけん」(隊員NO.007)
     「タク」(隊員NO.011) 

この日は平日であったが高専生はテスト明けの休み。
どうも高専とは、他の高校に比べて休みが多いようだ。

根室市は釧路市から約120キロ、約2時間の道のりである。
道東の住民にとっては、すぐ近くという感覚の距離であるが、
それにもかかわらず、釧路の人間はめったに根室には行かない。
せいぜい、花咲のかに祭りに行くか、納沙布岬に初日の出を見に行く程度である。

釧路支庁と根室支庁を合わせて

釧根(根釧)地区と言う。

根室市の自動車のナンバーは「釧路ナンバー」である。

このように、一見関係が深いように見える「根室市」と「釧路市」だが、
実は、住民の意識としての関係は薄いのである。
釧路市民にとっては、「別海」「羅臼」「標津」「中標津」の方が親しみを覚える。
これはおそらく、両市間の「半端な距離」が影響していると思われる。


途中、寄り道をしながらも、根室に到着。
前回、休みのため行けなかった、元祖エスカロップの店

某喫茶店(あえて伏せる)

に向かう。

店内は昔の喫茶店風で薄暗く、昼飯時のためか数組の客がいた。
「エスカロップ」らしき食している人も居るようで
我々はあたりを注意深く観察しながら、一番奥の席に陣取る。
洞窟のような雰囲気の店であった。

私「うーん、暗い」
テル「こりゃあ、デジカメ写らないかもしれないよ」
私「まあ、写してみてダメならあきらめよう」

突然、巨大な物体の影が我々に近づいた。
「鉄人28号か?」と思ったが、そうではなく、

怒りに目のつり上がった巨体のウエートレス

であった。

(注意:ここからの表現は、怒りのあまりやや誇張している面があるかも知れないが、 私の記憶ではおおむねこの通りであった。また、特定の個人を誹謗中傷する目的は全くない。職業的意識に欠ける現代の社会人に、正義の鉄槌をたたきつけるための文学的表現だと理解して欲しい。)

女性の容姿をあれやこれや揶揄するのは、あまり趣味ではないのだが、

彼女は「発情期のトド」に似ていた。

重そうに揺らす巨体、BGMを圧するような鼻息。
しかもこのウエートレス、注文もまだだというのに水も持っていない。

ウエートレス「あのー、そこにモノ置かないでほしいんですけど」
私「へっ?」

ウエートレス「そこっ!」


指さす先に棚があり、そこに私のデジカメが置かれていた。
私は何故叱責されたのか良く判らず、とりあえずデジカメを取り上げ、膝の上に移す。
ウエートレスは私の行為を確認すると、我ら4人をジロリとにらみ回し
注文も聞かず、どすどすと入り口近くのカウンターに戻っていった。
デジカメが置かれていた棚を良く見ると、趣味の悪い壷とか装飾時計が置かれている。
店内が暗く、テーブルとほぼ同じ高さだったので、良く判らなかったのだ。
もちろん「ここに荷物を置かないで下さい」だの「触らないで下さい」という表示はない。

「今のは何だったのか」と怒る間もなく、トドが、いやウエートレスが、潮吹いて、いや水を持ってきた。

ドチャ、ガチャ

たたきつけられるように、水のコップが置かれ、水しぶきが上がった。
しぶきの一部が「タク」のズボンに落下する

ウエートレス「あっ」
タク「わっ」

ウエートレスが言ったのは「あっ」の一言だけだ。
「ごめんなさい」「ご注文は?」の声は聞こえない。

「・・・」しばし両者沈黙。
お互い黙っていても仕方ないので、「エスカロップ」を4つ頼む。
ウエートレスは我々を再びにらみ回すと、去っていった。



生来短気な私は、頭に血がのぼりはじめていたが、
総隊長という立場上沈み込む一同をなごませなければならぬ。

私「♪〜サービスわるけりゃ命取り」

誰も笑わない・・・。

全員の表情が怒りに満ちている。

お互い話をする気にもなれず、まえけんとタクは少年ジャンプ、
テルはスポーツ新聞に目を落とす。

私もカウンター近くの本棚から「ちびまるこちゃん」を見つけだし読みふける。

トドが早足で料理を運んできた。と、

テルの左足に激突!

テル「うごっ」
この時、テルは激しく足を踏まれたらしい。
しかし、トド女は無言で皿を置いている。

何様だ、このトド女は!



いつもの私ならば、「きえええい」と叫びながらトド女の後頭部に飛びげりを喰らわせ、ひるんだところをエルボーでのけぞらせ、一生このような不作法で人を苦しめることが出来ないよう、バック・ドロップでとどめをさしてやるところなのだが・・・。

しかし、この怪物のことだ。
不意打ちの飛びげりは喰らっても、エルボーは効果がない可能性もある。
のけぞらず、「ふごおう」と鼻息を鳴らしながら、つかみかかってくるかも知れない。
つかまえられたら、おそらくベアハッグで締め付けてくるだろう。
そうなったら、こちらに勝ち目はない。

哀れな私は背骨をへし折られ、床に崩れ落ちる。
敵は次の獲物を「タク」に定め、額をアイアンクローで固定しておき、
残った左手を軽く払うと、「テル」の首がポンと飛ぶ。
腰を抜かした「まえけん」に向かってトド女は振り向き、にやりと笑いかける。

「あんた、あたしの彼氏になりな」

「まえけん」は命の惜しさに、必死でかぶりを振るだろう。

しかし、私は総隊長として人の上に立つ立場上、なんとか怒りを抑えることができた。
私の冷静な判断のもと、隊員達の貴重な命は救われたのであった。


皆様、お待たせいたしました。

これが「エスカロップ」です。

わざわざ根室まで食べに来ました。

味?味ですか?・・。

砂のような味です。

我々は根室の砂漠にいます。
喫茶店という名の砂漠に!

はるか向こうでトドがマスターの冗談に笑っています。


店を出るとき、壁に古い新聞記事が貼ってあり、
そこに「エスカロップ」の由来が書かれていた。
怒りのため、良く覚えていないが、「エスカロップ」とはフランス語らしい。

もう「エスカロップ」なんかどうでもいい!!

早くこの場を去りたかった。
一瞬でも早く、この忌々しい根室の町から離れたかった。



しかし、隊員たちがジュースを買いたいというので
「タイエー」というコンビニに寄り道。
私は降りる気になれず、「流星号」で待つ。

と、テルが店から喜びながら飛び出してきた。

テル「せんせ、せんせ、ちょっと」
私「んん?」
テル「あるある、うひひ」
私「ああっ?」

テル「エスカロップ売ってる」

私「なにい!」
なんと、このコンビニで
「エスカロップ」を弁当として売っていたのだ。



しかし、私自身はすでに

「エスカロップ」への興味を失っていた。

「エスカロップ」へのあこがれは

あの「トド女」にぶちこわされてしまった。


一行は、落胆の地獄からの救いを求めて、
本日のメインとなる、

霧多布へ。


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